2008/05/25

からだにクレーム

ぼくは悩んでいた。どうして、背中は背中っていうのか。

それで、お母さんに訊いてみた。

「ねえねえお母さん。どうして背中って背中っていうの?」
「え、知らない。それより宿題やったの?」

ぼくはお母さんを呪った。お母さんのくせに、そんなことも知らないのかって。それに、宿題なんて、背中の謎に比べたらどうでもいいことさ。

中、中。背の中。イン・ザ・背。別に、背中って、中じゃないじゃないか。なんだっていうんだい。

ぼくは、きっと大人にごまかされているんだって思った。ぼくが子どもだと思って、きっと騙してるんだ。だけど、そうはいかないぞ! ぼくは大人なんかよりずっと賢いんだからな!

それで、ぼくは考えた。背中についていろいろ考えた。背中ってものは、なんておもしろいんだろう、って。名前もふしぎなら、存在もふしぎだ。だって、いちばん他人からみられる部分なのに、自分の目では一度も見たことがないんだから!

そこで、ぼくは神に文句を言ってやった。教会で祈りを捧げるふりをして牧師を騙しつつ、神にクレームをつけてやった。

「ねぇ、天にまします我らが神よ。なんで背中に棚をつくってくれなかったんだい? どうしてそこを収納スペースにしてくれなかったんだい? 腕をさぁ、もっと360度可動するようにしてくれればさぁ、背中にも手が届いたし、よかったんじゃないの!?」

すると、神は一瞬たじろぎ、「その件につきましては、最大限善処した結果でございますので、どうかご理解いただきたく存じます」と言った。それでも、ぼくは神をも恐れぬ気持ちで、

「でも、じゃあ、なんで棚をつくってくれなかったのさ」

と、追及の手を伸ばすと、

「それにつきましては、現在担当部署の方に確認中でございます」

と言った。

ぼくは背中問題に端を発し、自分の体に不満を持つようになった。なんでこんな不便な体なのだろうと。

たとえば、なぜこんなに毛がないのかと思う。人間は獣から進化したはずなのに、いまじゃ毛がなくなって全身ツルッツルで、いちいち服を着なくちゃいけない。しかも、女の子なんかもっとかわいそうで、化粧までしなくちゃいけないんだ。

これが、もし毛がたくさん残っていれば、服も着なくていいし、お肌のことだって気にしなくてよかったんだ。おしゃれがしたいなら、ちょっと全身をペロペロして毛並みを整えてればよかった。そしたら、

「エミちゃん、おはよう。きょうもきれいな毛並みだね」
「そう? ありがとう。今朝はいつもより時間をかけてきれいにしたんだ。気づいてくれたのは、清水くんだけだよ!」

ってなったはずさ。

それに、猫みたいにいろんな毛並みの人がいたら、すっごく個性的だし、わかりやすいと思うんだ。それに、ふわふわしてた方が触ったときに気持ちいいじゃないか。

あと、尻尾ももちろん欲しい。これは絶対だ。

ぼくは小さい頃から、猫をみて羨ましく思ったものだった。だって、あいつら、ぜったい人間のことを見てばかにしてるに違いないんだ! いかにも自分の尻尾を自慢げにくねくねさせて、ぼくに見せびらかしてくるんだ! ほらほら、いいでしょう? って感じでさ。しかも、長い髭までぴくぴくさせながらさあ! くっそー、なんてお洒落なんだ!

尻尾があれば、もっといろんなことができると思う。尻尾があれば、尻尾サインみたいなのを作って、秘密のやりとりができる。右に二回振ったら「遊びに行こうよ」のサインで、右左右左右で、「あ・い・し・て・る」のサインだ。ぐるっと時計回りに一回転させたあと左右に振ったら‥‥‥ああ、そんなの、口じゃ言えないよ!

ああ、尻尾が欲しい!


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この記事へのコメント
にゃんにゃになりたいですね。
Posted by けーにゃん at 2008年05月25日 11:49
ほんとうににゃりたいですにゃ〜。
Posted by 清水 at 2008年05月26日 20:43
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