2008/05/19

貴女の存在は光の如く

当然ながら、大学の授業には楽しいものとそうでないものがある。

月曜日の午後の一つ目、ドイツ語講読の授業は後者だ。レベルが高い、という面では退屈な授業より数倍マシだけれども、予習に五時間以上かかりしかも授業を受けてもなお理解しきれないという点で厄介極まりない。

予習に週末の半分ほどを持って行かれ、なお理解しきれないたった2頁ほどの文章。

「意味が分からない。これ何語だよ」

と文句を言うも、どうにもならない。もちろんドイツ語には違いないが、出てくる単語の半分近くがわからない。知らない単語に赤のマーカーをひいてゆくと、赤紙の完成である。御母様、御國ノ為ニ死ンデキマス。という言葉が、思わず口をついて出てしまうほどだ。

難しい構文の文章の訳をあてられてしまったときは、特に憂鬱だ。もし広辞苑に「てんぱる」という語彙が追加されるなら、口絵としてそのときのぼくの様子を掲載して欲しいくらいである。その授業をひかえたぼくの心境は、暗黒である。

だが、一つだけ救いの光が存在する。

それは一つ下の学年の女の子。むさ苦しい男五人に混じり、一人だけその授業に参加している紅一点の少女。それはまるで、闇夜を照らす月。

夜をゆく旅人が月の光のおかげで暗い道を歩けるように、ぼくは彼女がいるおかげで難解な授業にも参加し続けることができている。そう言っても過言ではない。重い辞書だって、らくらくカバンに入れて持っていける。なんならスキップである。

そう、女の子の存在というのは貴重である。それはまるで砂糖のように、あらゆる苦いものを甘くする。ぼくはつねづね大富豪の家を襲って金品を収奪したいと思っているけれど、刑務所には女の子がいないから思いとどまっているくらいである。(同じ理由で大麻や覚醒剤も我慢している)

きょうもその困難な授業は困難な感じで進み、困難な感じで終った。隣にその子がいなければ、とっくにぼくの脳はねじれすぎて白目を向いていただろう。口からぶくぶくと泡が出ていたことだろう。

「それでは、次の週は‥‥‥」

と、教授が言う。次の週のはじめの訳は彼女が担当することになっていたはずだ。

「先生、あの」と、その子。「実は、この授業はあたしには難しすぎると思ったので、この前履修を中止したんです。すみません」
「そうか。それじゃあ、今回限りでお別れやなぁ」と先生。
「はい、ありがとうございました」

一瞬で、光が消えてしまった。

なんということだろう。もはや、この授業には闇が広がるばかりである。

「じゃあ、この部分の訳は清水くんに頼もうか」
「あ、はい」

もはや、漆黒の闇である。


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この記事へのコメント
おぅ!ミスターシミーズ!!

浮気許さないよ!!

こんな悪いオトコにはお仕置きだよ!!

ピシッ!!ピシッ!!



Posted by スィニョリーナ(長崎出身) at 2008年05月20日 15:32
スィニョリーナ、誤解しないでくれ! あの子とはたまたま席が隣になっただけなんだ! ぼくが愛してるのはきみだけさ!

ところでスィニョリーナ、どうしてきみは女性なのにうっすら髭のそり跡が見えるんだい?
Posted by 清水 at 2008年05月20日 22:23
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