2008/04/13

お嬢様

お嬢様は、実在する。

人は往々にして、いろんな存在を小説やドラマといったフィクションの中だけのものだと思い込む。これは無理もないことで、実際、フィクションの中で描かれる典型的な人物なんて、ほとんどいないのだ。ひょっとしたら、あまりに非現実的だからこそ、人はそういう物語に安心して浸れるのかもしれない。現実からの逃避を求めて‥‥‥。

しかし、ときどき、ほんとうに稀にだけれど、フィクションのような人物が目の前に現れることがあるのだ。

たとえば、一人称に「おれ」を用いる女の子の存在を、あなたは信じられるだろうか? きっと、「そんなものアニメの中だけの存在だ」と、一笑に付されるでしょう。けれど、ぼくは大学でそのような人物に出会い、目から鱗が落ちる思いをしたのです。一人称に「おれ」、語尾は「だぜ」。

ああ、人は、どれほど多くのことを、現実に起こるまでは「あり得ないこと」だと思い込んでいることか。

前置きが長くなったけれど、お嬢様という存在も、この現実の世界に、実在しているもののようです。

ここ数日、二度その人のことを書いたのだけど、もう一度確認しておくと、今年の新入生に一人、そういう人を発見したのです。はじめて道を聞かれたとき、ぼくはそのお嬢様オーラに打ちのめされました。その雰囲気、言葉遣い、清楚な外見。どれを取ってもお嬢様そのもの。ぜったい祖先は貴族だし、身内に国会議員の5、6人はいるし、なんなら皇族の血が入ってるはず。吉野家とか一回も行ったことない。っていうか、牛丼の存在自体を知らないはず。それくらいのお嬢様とお見受けした。

彼女にはその後、もう一度、ぼくのバイト中にものを尋ねられたことがあり、完全に顔を覚えてしまった。見まごうことなきお嬢様として。

さて、きょう、ぼくが大学の食堂に行ったとき、またしても彼女が目の前にあらわれた。ぼくがもう食事を終えようというとき、彼女はレジを通過して席に着くところだった。ぼくはもう帰ろうかと思っていたのだけれど、彼女の生態が気にかかり、彼女の後ろ姿が見えるところまで移動し、携帯の画面を見てカモフラージュしつつ、観察を開始した。(携帯って、ほんとに便利な道具ですね)

すると、一度席に着いた彼女はおもむろに立ち上がり、お盆を持ってドレッシングなどの置いてある一角に向った。そして、たくさんあるドレッシングを手に取って物色しはじめた。

(ソースを探しているのか?)

とぼくは思った。お盆の上にコロッケがのっていたからだ。あまりのお嬢様ゆえに、入れ物の形からはドレッシングとソースの区別がつかないに違いない。だから、いちいちラベルを確認しているのであろう。そう思った。きっと、家にいるときは専属のシェフがすべて調理してテーブルに運んでくるものだから、そんな知識もないのだ。イカリとかカゴメとか知らないんだ。

だが、ぼくの予想は見事に裏切られた。

なんと、彼女はさんざん迷った挙げ句、ドレッシングをコロッケにかけたのだ。

いやいやいやいや。そんな馬鹿な。ぼくは動揺してしまった。なぜ、あれだけ迷ってドレッシングをコロッケに? 考えられない。

しかし、驚きはこれだけでは終らなかった。彼女はさらに別のドレッシングに手を伸ばし、その蓋を開けたかと思うと、ご飯の上にかけたのだ。

「ジーサス!」

ぼくは心の中で叫んだ。キリスト教徒でもないのに、神の子の名を叫んだ。それほどにショッキングな出来事であった。

しかも、冷静に分析するなら、彼女はドレッシングをまったく振ってなかったのだから、たぶん上に浮いてる油ばっかりかかってしまったに違いない。きっと、食事は専属のシェフが毎晩調理してテーブルに運んでくるものだから、ドレッシングは振るものだということすら知らないのだろう。キューピーとか知らないんだろう。

ドレッシングをコロッケとご飯にかけた彼女は席に戻り、一人食事をはじめた。少し話はずれるけど、ぼくは一人で食事をする女の子っていうのが好きで、端的に言うと、すげぇ萌える。なんか、萌える。友達といっしょに食べてるとおしゃべりがメインみたいになってしまうんだけど、一人だと「食べる」という行為が中心だから、こう、食べてるねー! って感じがして、なんか、いい。それに、群れないっていうのが、女の子の美しさをひきたてるっていうところもあって(4000字ほど省略)。

少し話がずれたけど、そうして、彼女は食事をはじめたのでした。で、ここまでぼくはずっと携帯でカモフラージュしつつ彼女を観察していたわけだけど、ふと、自分がストーカーと呼ばれる人種になっていることに気づき、ポリスに手錠をかけられる前にその場を離れたのでした。

ぼくのような肥だめ出身の下層民には難しい話かもしれませんが、なんとかして、あの典型的お嬢様である彼女とお近づきになりたいものです。そして、専属シェフが腕を振るったフランス料理を、彼女と、その両親と、たまたま遊びにきた各国首脳らといっしょにいただきたいものです。
この記事へのコメント
最後ヴェルテルみたいに死んじゃ駄目ですよ。
Posted by Ricky at 2008年04月13日 13:48
古典的な手法だけどすれ違うときハンカチを落とす・・・もちろんお嬢様が拾ってくれるのを強く念じながらね
Posted by ハニワマン at 2008年04月14日 05:50
<Herr Ricky>
そんなにゲーテの影響は受けてません!

<ハニワマンさん>
そんなにジョジョ一部の影響は受けてません!
Posted by 清水 at 2008年04月14日 16:11
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