2008/06/20

フランソア喫茶室

さて、第二回となる『京都のおすすめ喫茶店シリーズ』ですが、今回はフランソア喫茶室をご紹介いたします。

週の最期の授業となるゼミのあと、ぼくは電車で四条(にぎやかなところ)に向いました。雑誌を片手に目的の喫茶店を探します。

「この路地かな」

そこには細い道がありました。たぶん、ここに違いありません。ぼくはずんずん奥に入ってゆきました。すると、にぎやかな四条通とはちょっと違う、人通りの少ない細道がありました。そして、奥の方をみると、きらきらした看板が輝いていて「○○ヘルス」と書いてありました。

それがどんな店かは分かりませんでしたが、なぜか「違う」というカンが働きました。それらの店はおそらく健康に関わる何かを売っているのでしょうけれども、ぼくは喫茶店にゆきたいのです。入る道を、二本間違えていたのでした。

もう一度雑誌で通りの名前を確認し、こんどは大丈夫だと思いました。すると、

「お兄ちゃん、たった5,000円だよ! どうだい、たまには!」

と、元気なおじさんに声をかけられました。それがどんなお店か分かりませんでしたし、何にせよ5,000円は高いだろうと、それに、「たまには」の意味もわかりませんでしたので、申し訳ないと思いつつ無視を決め込みました。あのあたりは風変わりなお店が多いということをはじめて知りました。 (お金に余裕ができたら入ってみたいと思います)

さて、そのおじさんのいる店の二件となりに、フランソアはありました。営業しているのだろうか、とふと不安になってしまいましたが、あいているようです。

「いらっしゃいませ」

ぼくがドアをあけると、荒れ地の魔女が迎えてくれました。白髪の魔女でした。あまりその辺ではお目にかかれないような、とても上品な、あるいは浮世離れした雰囲気をたたえたマダムでした。

店内はゴシック様式というのか、バロック様式というのか、絶対君主が「朕は朕は」とがんばっていた頃のフランス上流階級の屋敷を彷彿とさせるつくりでした。赤い布張りの椅子に、焦げ茶色の木の机。壁にはモナリザの絵、古いパリの地図、女性のデッサンなどが飾られ、『アヴェ・マリア』などの声楽が流れていました。

そして、いちばん驚かされたのはウェイトレスでした。お店には女性の店員しかおらず、その荒れ地の魔女以外は全員シスターでした。つまり、修道女なのでした。黒い髪に、服は水色のワンピースでした。いつぞや行った秋葉原のメイド喫茶も独特な雰囲気でしたが、こちらはもっと独特でした。

「すみません」ぼくはシスターの一人を呼びました。「コーヒーをください」

「はい」シスターは静かに注文を受けました。

彼女らは他の喫茶店ではありえないほどの落ち着きを見せていました。それがこの喫茶店の独特の、異世界的なムードをつくりだしていました。ぼくはミステリアスに謎めいたふしぎなシスターの一人に恋をしました。彼女は笑顔も見せず、慌てることなく、しずしずと注文をとったりコーヒーを運んだりしていました。

けれど、なぜだろう。ぼくは疑問に思いました。なぜ、シスターたちが魔女のもとで働いているのか。それは多いに疑問でした。聖と魔。それは本来、対立するもののはずだからです。

(もしかして‥‥‥!)

ぼくは気づいてしまいました。シスターたちは、きっと、あの魔女に呪いをかけられ、働かされているに違いないのです。美しく若いシスターに嫉妬をした魔女が、彼女らに呪いをかけ、あのフランソア喫茶室から出られないようにしているのです。

「あなたたちがここで年を取ってよぼよぼのお婆さんになるまで出しません。あなたたちはこの中で若さと美しさを少しずつ少しずつ失ってゆくのです」

きっと、魔女がそう言ったに違いないのです。おそろしく、かわいそうな出来事です。

ぼくは心に決めました。そのうち、ぼくがあの魔女を倒して、あのシスターたちを解放してやろうと。けど、そのためには荒れ地の魔女に対抗できるだけの魔力が必要です。ぼくが魔法を使えるようになるまであと七年。まだかなり時間はかかりますが、いずれ必ず、強力な魔法使いとなって、彼女らを救出してやるのです。

そんな魔女と捕われのシスターが営んでいるフランソア喫茶室。古き良きヨーロッパの空気をたたえた空間とおいしいコーヒーが、静かにぼくたちを待っています。


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この記事へのコメント
『ヌメリ』という魔法が強力だと伺っています。

是非マスターして、魔女を撃破してください。
Posted by ながさき at 2008年06月21日 10:59
ぼくの知る限り、その魔法はpatoという方が開発したものだそうで。いまは彼の数百分の一の魔力も訪問者数もありませんが、いずれ肩を並べられるようになりたいです。
Posted by 清水 at 2008年06月21日 22:50
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