2008/03/04

哲学者の口説き方

「哲学科ってどんな勉強してるの?」

というのは、哲学科の末席を汚しているぼくにはよく尋ねられる問いで、その度にぼくは困ってしまう。どんなふうに答えたらいいのか。これは難しい問題だけれど、いつでも相手に伝わるような答え方を用意しとかなきゃいけないと思う。それができないようじゃ、哲学科の名折れなのだ。



「ねぇ、哲学科って、どんなこと勉強してるの?」

喫茶店にて。

「そうだな。一つ例をあげるなら、時間は外の世界に存在するものじゃなく、人間がかってに作り出したものなんだ、ってことかな」

「なんだか難しそうね」

「そんなことないさ。時間は客観的に存在するものじゃない。その証拠に、何をしてるかによって、時間の進み方がかわったりするだろ? たとえば、こうしてきみと二人でコーヒーを飲んでいると、一時間がほんの一瞬のように感じるもの」

「なぁにそれ? 口説いてるつもり?」

「違うよ。思ったままを言ったまでさ」

「一時間が一瞬だから、せっかく頼んだケーキを食べる間もない、ってこと?」

「いいや。これは、ぼくのスイーツはきみだけで十分、ってことさ」

「そう思うんだったら、これ以上あたしに甘い言葉を投げかけてどうしようって言うのかしら?」

「どうするかって? きみは、ショーケースの中のおいしそうなショートケーキを、見ているだけで満足できるとでも言うのかい?」

「もう、馬鹿なんだから。よく恥ずかしげもなくそんなことが言えるわね」

「思ったことはなんでも言って対話をする。これがソクラテスやプラトン以来の哲学の基本さ。そう、たとえば、きみは美しい──」

「やめてよ恥ずかしい。プラトンの本には、女の子の誉め方まで書いてあるの?」

「いや、ないさ。プラトンは一生独身だったしね。だけど、きみが古代ギリシャに生まれていたら、きっとプラトンは一冊も本を書かなかったはずさ」

「どうして?」

「男はいい女に夢中になっていると、哲学なんてどうでもよくなるものなのさ。今のぼくみたいに」

「あら、哲学科の学生失格ね」

「そうかもしれないね。きみは一人の哲学青年の芽を摘み取ってしまったんだ。罪深い人だ」

「別に、あたしは何も悪いことはしてないわ」

「いいや、人間はみんな罪深い存在なんだよ。ほら、アウグスティヌスがこの『告白』って本に書いているように」

「なんだか難しそうな本ね」

「そんなことないよ。ちょっと読んでごらん」

「う〜ん‥‥‥やっぱり堅苦しいわね」

「そこじゃないよ。ほら、挟んであるしおりを見て」

「しおり? この紙ね。えっと、『きみが好きだ。ぼくとつきあってくれ』‥‥‥」

「これは、アウグスティヌスじゃなくて、ぼくからきみへの告白だよ」

「もう! まわりくどいんだから。馬鹿‥‥‥大好き」

2008/03/05

やさぐれフォト

「あのー、清水先生でいらっしゃいますか?」

「はい、そうですが」

「実は、○○という生徒さんのことなんですが、男の先生ですと接しづらいということで、数学を他の女性の先生にお願いしたいみたいなんですよ」

「えっ!?」

「中学生というと、難しい時期でもありますし‥‥‥」

「‥‥‥ということは」

「ええ。申し訳ありませんが、○○さんの指導からは外れて頂くという形になります」

「ジーサスッ!」


ぼくの中からフツフツと負の感情が生まれてきた。

(そそ、そんなばかな!? あれほど熱心に数学を叩き込んでやったというのに‥‥‥)

この気持ちはいったいなんなのだろう? 思わずメシアの名をぼくに叫ばせるものの正体はなんなのだろう? よくわからないけれど、ぼくは過去にもこんな気持ちを感じたことがある。これは‥‥‥そうだ、「やさぐれ」の気持ちだ!

ぼくはこの気持ちをぶつける場所を新たに設置すべく、右手にハンマー左手にバールでトカトントン、トカトントンとブログをつくりはじめた。けど、今やってるものと同じじゃ意味がない。だから、そこは写真専用にしたのだ。テキストなんて、Fuck You!

そういうわけで、今後は「やさぐれフォト」もよろしくお願いします。

2008/03/06

フィラメント

家庭教師の仕事で、小学生に理科を教えていたときのこと。

ぼく「えっと、電流の問題だね。豆電球と電池を図のようにつないだとき、明かりがつきませんでした。その原因として考えられることを一つ書きなさい、か。わかるかな?」

生徒「電池が切れてるから」

ぼく「そう、正解。他には何かあるかな?」

生徒「フェラメントが切れてるから」

ああ、子どもの無知とは恐ろしいもの。電流関係だと思って発した単語に、年齢不相応のワードが埋め込まれていることもわからないのだから。

このエピソードで懐古されるのは中学時代の同級生Tくん。当時、某高級自動車メーカーの名前が隠語として流通しはじめていたのに、彼はまだ、それに気づかずにいた。

あ、そうそう、関係ないけど、先日「ダブル恵方巻」というギャグを開発しました。右手と左手、それぞれ別に持つやつです。もしこのギャグをうっかり生徒の前で披露してしまって、生徒が親の前でマネをしたことでそれがバレて、ぼくが塀の中にぶち込まれたとしたら、恵方巻の差し入れをお願いします。え? いや、差し入れって、そういう意味じゃな(きょうの日記は最悪だ)

2008/03/12

花粉症

鼻水がね、止めどなく出てくるんですよ。

きょうは長い長い冬が終り春本番を迎えたかのようなぽかぽか陽気で、コートも着ずにお外に飛び出したのですが、花粉の野郎がぼくを苦しめるのです。

しかしまあ、この花粉症という厄介なアレルギーも春の風物詩の一つ。この、ぼおっとした感覚も、春のおだやかな陽気とあいまってぼんやりのほほんとした雰囲気を演出しているのです。

予約していた本を買いに大学の書籍部にいったときのこと。ぼくは久しぶりに大学のキャンパスを歩きました。冬休み中で学生はあまりいなかったけれど、初々しい感じの男3人がきょろきょろと周囲のレンガ造りの建造物を見回している姿がありました。

「おやおや、新入生かな?」

ぼくはそんな想いを胸に抱き、なんだかうきうき気分。希望を胸に新しい学校に入ってくる若い人をみるのは、こちらとしても幸福なことなのです。ぼくは老い先短いおっさんだけれども、きみたちには未来がある。がんばれ。そんなふうに思うのでした。

ところで、どうしたって気になるのは、新入生の女の子。ぼくの学科にかわいい子は入ってくるだろうか? 何人入ってくるだろうか? なんとかして知り合えないか? 履修相談とかいう名目でいっしょにお茶できないだろうか? おっぱい触れねぇかな?

そんな妄想に胸などを膨らませながらキャンパスを歩いていると、花粉が鼻孔をくすぐり、へっくしゅ、とくしゃみが出ました。花粉のアレルギーと恋愛への期待感は、一生治らないもののようです。

2008/03/14

ホワイトデー

ホワイトデーです。

とは言っても、正直冬休みで自宅にひきこもっている大学生としては何の関係もありません。これで彼女の一人でもいれば、おしゃれなレストランにでも連れていき、そのあとは部屋で愛を囁き合うだの耳に息を吹きかけるだのホックを外すだの吸うだの吸わないだのできるのですが、いかんせんモテないのでそれもできず、一人カレー作りに精を出すぼくなのです。

しかし、まあ、まったく何もしないというのはいささか寂しいものがありますので、せめてこのブログを読んでいる方々には、ホワイトデーらしいことをしたいと思います。

そういうわけで、きょうのブログはホワイト

2008/03/16

カルボナーラ

「お待ちどおさま。きみの大好きなカルボナーラだよ」

「おいしそう。あたし、カルボナーラが世界で二番目に好きなの」

「おや、じゃあ、いちばん好きなものなものは?」

「あたしの口から言うまでもないわ。だって、いまあたしの瞳に映っているんですもの」

「なるほど、目は口ほどにものを言う、ってわけか。さあ、はやくカルボナーラをお食べよ。恋心とパスタは冷めやすいものだから」

「あら、悲しいことを言うのね。もしかして、あたしのことを、もう愛していないの?」

「なにを言ってるんだ。もちろん愛してるよ、世界で二番目にね」

「じゃあ、一番は?」

「一番は、口の端を汚しながらカルボナーラを食べてる女の姿さ。さぁ、分かったらはやくお食べよ」

「それじゃあ、カルボナーラさえ食べていれば、あたしじゃなくてもいいってことなの?」

「そうさ。だけど、ぼくがカルボナーラをご馳走するのはきみだけだよ。きみじゃないと、我がままなパスタたちはアルデンテになってくれないのさ」

「ところで、あなたにとって、あたしは今でもアルデンテかしら?」

「どのお口がそんな分かりきった質問をするのかな? 答えは、ぼくの口じゃなくて、きみの目の前にあるカルボナーラが教えてくれる」

「あなたって、ほんとにパスタと女の扱いがうまいのね。きっとナポリタンやペペロンチーノもつくれるんじゃなくって?」

「まったく困った人だよきみは。カルボナーラも口も減らないんだから」


カルボナーラと恋は、冷めないうちにどうぞ。

2008/03/17

魔城新風館

気の迷いだった、としか言いようがない。

この三日間部屋にこもって本を読んでいたぼくは、お外に出たくなった。たまには人間たちがいるところに行ってみたいって思った。それで、喫茶店にいった。

けど、きょうが日曜日だってことを忘れてた。

外にはいつもより人がたくさんいて、二条城の前を通るときは観光客がいっぱい。喫茶店についたときも、喫煙席しかあいてなくてあまりの煙さに嫌気がさし、抹茶ラテを半分残して店をあとにしたんだ。

「もう家から一歩も出るもんか!」

そう決意した。

ぼくが間違っていたんだ。喫茶店なんかで集中して本が読めるわけない。まして京都の日曜日。ぼくが間違っていた。

だけど、そうやって反省しながら烏丸通を自転車で北上する途中、新風館なる建物が目に入った。

ほんとうの戦いは、ここからはじまる。

新風館(しんぷうかん)というのは、洋服屋や雑貨なんかを扱うお店が集まってる一種の要塞都市である。京都のおしゃれボーイ・おしゃれガールたちのメッカであり、彼ら彼女らは毎日五回、新風館の方角に向かってお祈りを欠かさない。

いつも素通りしてきたその館。このとき、ぼくの気持ちが揺れ動いた。

(せっかく外出したんだし、ちょっと寄ってみるか‥‥‥)

ぼくは新風館の敷地に足を踏み入れた。大きな階段を一歩一歩あがってゆく。両側には3m間隔でイギリス兵のような格好のボディーガードが立っている。もちろんのこと、マシンガンを担いでいる。少しでも不穏な動きを見せたら、即、蜂の巣。

レンガの建物で囲まれた新風館の内部に潜入すると、そこはもはや治外法権。日本の法律は意味をなさない。独自の法と秩序によって成立するその場所に、いくつもの店舗がせめぎあい、中心のステージでは若者が唄を歌っている。日本にはもういないと思っていた魔女がところせましと上空をほうきにまたがって飛び回り、さらにその上空には失われし伝説の空中都市ラピュタが浮いている。

(ここが新風館かぁ‥‥‥)

ぼくは感心した。噂には聞いていたが、ほんとうに実在したとは‥‥‥。

ぼくはきょろきょろしながら、ある一つの店舗に目をつけた。ぼくの記憶が正しければ、そこには、異国の文字で"BEANS"と書かれていた。

(び‥‥‥ビーンズ?)

いったいどんなお店なのだろうと、不安と期待の入り交じった気持ちで店の敷居を跨ぐと、そこにはまばゆいばかりのおしゃれ服が並べられていた。なるほど、大学のおしゃれボーイたちが着てる服はここで入手したものであったかと、ぼくは納得し、いくらかの喜びを感じた。だが、それも束の間、そこにはただならぬ気配が漂っていることに気づく。

その狭い店内には、驚いたことに、おしゃれな人間しかいなかったのだ。「服はまりもっこりを隠せればいい」が座右の銘であるぼくは、完全に浮いていた。ぼくはレベル10でラストダンジョンに迷い込んでしまった勇者のような気持ちになった。まだ銅の剣とか使ってるのに!

実際、そこには別世界の住人であろう人々がたくさんいて、ぼくは心底参ってしまい、一瞬で髪の毛がすべて真っ白になった。

「いらっしゃいませー」

と、カノジョが7、8人はいそうなイケメンの店員が朗らかに声をあげる。また、別の場所をみると、ぼくと同い年くらいのカップルがいて、

「ねぇユウジ、これどう?」

「それメンズじゃーん」

「Sだったら着れるよー」

という万死に値する会話を繰り広げている。ぼくは久しぶりに純粋な(おそらく血統書付きの)ギャルを目撃して、恐怖と好奇心の入り交じった気持ちを抱いた。しかも、よくよく観察してみると、彼女の髪の毛には赤色のエクステが付けられているではないか!

(そ、そんな馬鹿な話が‥‥‥)

ぼくは驚きのあまり髪の毛がぜんぶ紫色に変色し眉毛が5cmは伸びた。まさか黒髪の中に赤いエクステを埋め込むなどという行為が許されるなんて‥‥‥。ああ、ぼくはなんてところに迷い込んでしまったんだろう。

後悔の念に打ちひしがれていると、周囲の人々がぼくのことを馬鹿にしているのが聞こえてくるような気がした。

ひそひそ‥‥‥

(貧乏人のくせに‥‥‥)

(お前みたいな奴はユニクロいけよ、ユニクロ‥‥‥)

(これだから2浪は‥‥‥)

(うわぁー、どこからどう見ても変態‥‥‥)

などなど、ぼくに対する罵詈雑言の数々。もはや、ぼくのHPは残り3である。

そんなとき、一人の異質な男が目に飛び込んできた。その外貌からして、彼は他のギャルやギャル男とは違うようだ。むしろ、同志であると言ってよいだろう。ぼくは彼の身を案じた。

(やめとけ! お前には無理だ!)

ぼくが目で合図をすると、彼はそれに気づいたようだったが、静かに首を振っておくに進んで行った。

(やめろ、そっちに行っちゃだめだ!)

そう、彼の足の向かう先は、ビーンズの中でも高額の商品が集められた毒の沼なのである。しかし、彼はもはや振り返ることもなく、自ら死地に赴いた。その後ろ姿には、太平洋戦争の頃、御国のために米英の母艦に突撃していった神風特攻隊と同じ憂いがにじみ出ていた。直後、店の奥の方で「天皇陛下バンザーイ!」のかけ声が聞こえ、炸裂音の後、辺りには硝煙の臭いが立ちこめた。

ぼくは同志を失ったことで戦意を消失し、また、パーカーが1万円とかしてなんか嫌になったので、店を出た。全身は恐怖で汗ばんでいた。どうして洋服屋というのは、どこもこんなに暑いのだろうか?

新風館に足を踏み込んだ当初、正直に言えば、ぼくはおしゃれへの欲求を感じていた。ぼくもおしゃれになりたい。イケてる大学生になりたい。女の子にモテたい。そんな気持ちだった。けれど、希望を抱いて入ってみたそこの空気は、ぼくという異物を拒絶しており、ぼくの方も、そこの空気を吸っては生きられないことが分かった。そこに吹く風は、ぼくには合わなかったのだ。

もと来た大階段を下り、ぼくは自転車にまたがりペダルをこいだ。じっとり汗ばんだからだに、風が心地よく吹き付ける。ふと後ろを振り返ると、レンガ造りのおしゃれな新風館は、いつにも増して邪悪なオーラを発して、近寄る者を圧倒していた。

ぼくは自転車で走りながら、爽快な気持ちになった。そして、ふと一つの考えが頭に浮かんできた。それは、こういう考えだった。


(そうだ、ユニクロ行こう)

2008/03/18

花粉症がひどい

花粉症がひどい。

きょうは油断して外出してしまい、帰宅してからずっと鼻水がとまらない。ぼくはもはや泉となった。涸れぬ泉である。永遠のオアシスである。すべての旅人が避けて通るオアシスである。

実際、ぼくはまちがっていた。こんな時期に長時間屋外をぶらぶらするんじゃなかった。つい先日、お外に出るのをやめようって思ったばかりなのに、またしても繁華街で服を買おうとするなんて。しかも、また一着も買ってねぇし。あしたユニクロ行こうとか思ってるし。

しかし、それにしても、今日はひどい。

鼻炎薬も効かないとはいったいどういった了見なのか。薬が花粉に負けているってのか?


薬「だめだ。こらえるんだ。鼻水の生産量が過剰だぞ!」

花粉「うるせー! もっと鼻水を出せー!」

薬「くっ‥‥‥。花粉の量が多過ぎる!」

花粉「薬なんか屁でもないわい! からだは正直じゃのーっ!」


ああ、花粉、なんと憎き存在であろう。加藤鷹も敬服するほどの大洪水を起こすお前は何ものだ? ゴールドフィンガーどころの騒ぎではないぞ。

耐えかねたぼくはティッシュを一枚取り、それを半分にちぎり、まるめて鼻の穴につっこんだ。こうなれば物理的に遮断するしか手がない。ふふ、これで流れ出てくることはあるまい。どう考えてもかっこわるいけど、誰も見てないし、いいさ。へへ‥‥‥へ、へ、へっくし!

どばぁっ!

どろーん!

‥‥‥

あーあ‥‥‥

2008/03/19

風邪だった

いや、おかしいとは思っていたのですよ。

いくら花粉症とはいえ、昨夜はひどかった。あんなに鼻水が出て頭がぼおっとするなんて。で、あとで考えたら、あれは風邪の症状なのでした。

きょうはきのうよりだいぶよかったのだけれど、案の定唇の横にヘルペスが! ぷつぷつと気泡のようなものができて、せっかくのイケメンが台なしなのです。(すみません、一カ所嘘をつきました)

それにしても、長期の休みになるとぼくは必ず風邪気味になる。まず間違いない。ポイントは「風邪気味」ってとこで、本格的な風邪にはいたらないのです。けど、若干風邪っぽくなるのです。これはもう確定事項で、


ウィルスのボス「おーい野郎ども! 冬休みになったからいっちょやるかー!」

ウィルス一同「うぃーっすっ!」


というやり取りが交わされているとしか思えない。

しかし、今回はウィルスどもが張り切りすぎたようで、3月に入ってから体調を崩すのは3回目だ。どうなってるんだ。

ふしぎなことに、ぼくは授業があるあいだは一切風邪をひかない。毎日元気元気でスキップで登校してる。なんなら鼻歌まじりだ。急いでるときなんか、曲がり角で見知らぬ美少女にぶつかって、


どしーんっ!

美少女「いったぁーい! あんたどこ見てあるいてんのよ!」

ぼく「うるせぇなぁ! 悪いのはそっちだろ!?」

美少女「ふんっ! バカに構ってる暇はないわ。遅刻しちゃう!」


で、教室に行ってみればその子が転校生だと分かり、淡いラブストーリーのはじまりである。最終的にぼくがイタリアに留学することになって、彼女は小説家をめざしはじめて、ぼくの出国前に自転車に二人乗りで丘に登っていって、


ぼく「雫、結婚しよう!」

雫「嬉しい! あたしもそうなればいいと思ってた!」

ぼく「雫、大好きだ!」


カントリーロード、この道ー、ずーっと、ゆけばぁー、あのー街ーにー、つづいてーるー、気がすーるー、カントリーロー。


2008/03/24

ジハンキモドキ

あの、たまに葉っぱとかに見えて実は虫っていうやつがいるじゃない? それにカメレオンなんて、いるはずなのに見えなかったりする。生物なのに生物に見えないっていう場合があるんだ。石みたいなキノコもある。土と同化してるような生き物もいる。

っていうことは、ふだん目にしてるものでも、それが実は生物だった、っていうことも十分ありうる。いや、その可能性の方が高いくらいさ。だってそうでしょ? 人間の目なんていい加減なもので、生物かどうかなんて、ちょっと見たくらいじゃ見分けられないもの。

外を歩いてるといろんなものが目に入るけれど、たとえば自動販売機なんて、怪しいね。そもそも、あんなにたくさんあるってことが不自然じゃないか。ぼくは目に映る自動販売機のうち、使ったことがあるやつなんて、ほんと、10台に1台もないもの。そのほとんどは余分なもののはずなんだ。

それなのに人間は阿呆だから、多すぎってことに気づかない。それをいいことに、自動販売機に成り済ましてる生き物が絶対いる。もともとの生物がどんな姿なのかよく分からないけれど、絶対化けてるんだ、自動販売機に。それはもしかしたら新種の生物かもしれない。そしたら、ぼくはその第一発見者だ。ぼくはそいつらをジハンキモドキと名付けるよ。

ジハンキモドキはそこら中にいる。日本中にいる。自動販売機のうち八割方は本物の機械だと思うんだけれども、残りの二割はジハンキモドキだ。道ばたに突っ立って素知らぬ顔をしているんだ。ほとんどそこでジュースを買おうとする人はいないから、正体がバレる危険も小さいんだ。

自販機の表面は金属っぽくてつやつやしているけれど、そういう質感まで真似できるジハンキモドキはすごいよ。生物って想像以上にすごい力を持ってる。きっとあいつらは体内に大量の鉄分を含んでいて、それを自由自在に皮膚の方に集めることができるんだ。

あ、もしかしたら、でも、ジハンキモドキの存在に気がついたのは、ぼくがはじめてではないかもしれない。ときどき、自販機の下や釣り銭の口のところに手を突っ込んでるおじさんがいるけれど、あの人は実は生物学者で、調査対象にしてるジハンキモドキの状態をチェックしてるのかも。あれは研究活動なのかも。すごい、すごい! 感動した! これで一つ、また謎が解決したよ、お母さん!

2008/03/26

モテるヘアースタイル

髪の毛を切ってきた。

もはや齢23を数えるぼくは、髪の毛を切ることにも罪悪感を抱かなくなっている。平然と、なんの気なしに、長くなってきたから切りに行こうかな、くらいのものだ。月日は人を変える。

はじめて行った美容院──ぶさいくでも入店してOKのとこ──で、ぼくは雑誌を手渡された。ぼくは美容師のおじさんの表情を伺いながら、こっそりとその雑誌に手をつけ、おずおずとページをめくった。おじさんは怒らなかった。だから、ぼくは、一つの写真を指差して、「こういうふうにしてください」って言った。言ってやった!

その雑誌のタイトルは「モテる髪形100」みたいなやつで、それは、ぼくに対する皮肉ですかと、嫌がらせですかと、そういう類いのものだったんだけれど、けど、それにしてくださいと言ってしまった。そして、わずか一時間足らずで、ぼくの髪形が変った。 月日は人を変える。

外に出て歩いてみると、美容師さんの腕は確かだったみたいで、急にモテるようになったぼくのまわりには、女の子がたくさんくっついてきた。びっくりだ。びっしりだ。まるで、むかしジャスコのゲームセンターにあった綿飴の機械みたいに、あれで割り箸にちょっとずつ綿飴が巻きついていって塊になるみたいに、道ですれ違う子や、喫茶店の中からぼくを見かけた子などが、わらわらわらと群がってきた。

けど、ぼくは鬱陶しくなってきたので、その子たち全員に手持ちのコアラのマーチを一つずつ手渡して、家に帰るように言った。一箱ぜんぶ、なくなってしまった。ふう、やれやれ。一段落。これだから、髪を切るのはめんどうなんだ。

2008/03/29

春がきた

春、ですよね?

たまには疑問形ではじめるのもよいかと思い、奮発してハテナマークを用いてみたのですが、この気温、花粉、うららかさ! どれをとっても疑問の余地などありますまい! 春ですよ!

あまりの嬉しさに、ビックリマークを3つも消費してしまいました。あしたまたスーパーで買ってこなくてはいけません。あ、そんなことより、春、というお話でした。そう、春だったのです。(ビックリマークがなくなったので、代わりに過去形を使いました)

春ともなると、人の心はうきうきするものです。そして、ぼくは人です。したがって、ぼくの心もうきうきするのです(三段論法)。なので、ちょっと部屋の模様替えをしてみました。

それで、ベッドの位置を少し動かし、そのとき、隣においてある無印良品の箱も動かしたのです。この箱は「禁断の箱」とぼくによって名付けられており(受動態)、中には人に見せられないものが少しばかり入っているのですが、それはいいとして、これを動かしたとき、ぼくは衝撃を受けざるを得ませんでした(can not help ~ing)。

なんと、そこにはびっしりとカビが生えていたのです!

とうとう切り札であって小文字のビックリマークまで使ってしまった次第なのですが、そう、その箱の壁と接していた二面には、びっしりぎっしりと、白や緑のカビが繁茂していたのです。マジック・ザ・ギャザリングで言うところの白緑デッキ(回復とクリーチャー中心の編成)です。

ぼくは衝撃を受けました。なぜなら、ぼくの部屋はきれいさに関しては定評があったからなのです。人を部屋に招くたびに「ホテルみたい」だの「モデルルームみたい」だの「A型だなお前」だのと言われてきたのです(直接話法)。

そう、ある時など、おなじ学科のMさん(学科でいちばん人気の女の子)が、

「清水くんの部屋ってホテルみたいなんでしょ?」

などと話しかけて来て、ぼくは、

「そうだよ。ぼくの部屋はいつでもホテルみたいなんだ。だから、今夜、どう?」

と言ってやろうかと思ったのだけれど、ふと、その子にはカレシがいることを思い出し、さらに、その日の夜は大好きなネットラジオ「トム&ハンクス」の生放送があることにも気づいて、その言葉を飲み込み、「まあ、そうかな」という、おもしろみのない返答をしかできず、自分は、そうして、またしても、日陰者の性質を育成してしまったのでした。生まれて、すみません。

そんなきれい好きで恥の多い生涯を送ってきたぼくなのに、箱にカビが、箱にカビが、箱にカビが群生しているなんて、信じ難いほどに衝撃です。ショックです。きれいだと思っていた部屋の一角に、ナウシカも真っ青の腐海が生まれていたんだもの‥‥‥。うああ‥‥‥。あう‥‥‥。

しかし(逆接)、ぼくは気づいたんです。あるいは、人類こそが、地球に巣食うカビのような存在なんじゃないかと(倒置法)。

地球。この美しい惑星の表面に、60億以上もの人間が繁茂し、大気を汚し、無数の生物種を絶滅させている。酸性雨や砂漠化といった地球のSOSにも耳を貸さず、相変わらず戦争や紛争を続け、環境を汚し続け、自らの首を絞める、愚かで哀しい生き物。ヒト。

いっそ、ぼくがカビの生えた箱を捨てるように、地球は人類を捨ててしまった方がいいのかもしれない。こんなカビは、すべて、焼き尽くすべきなのかもしれない。うぐぅ‥‥‥。

宇宙人さん宇宙人さん。

ここへ来て。ぼくの呼ぶここへ。

そちらの船の主砲を用いて、この星の人間を一掃してください。

宇宙人さん宇宙人さん。

宇宙人さん宇宙人さん。

うふふふ‥‥‥。


(気がふれてしまうのは、春、だからです)

2008/03/31

ペコちゃん

まただ。また、唇の横にヘルペスができた。

10日ほど前の日記を読めばわかるのだけど‥‥‥え? スクロールするのがめんどくさい? それじゃ説明するけど、10日ほど前に、体調を崩してヘルペスができた。ヘルペスというのは、水泡みたいなもののことなのだけど、それが、またしても、できてしまった。

ようやく前回分のがかさぶたになって剥がれようというときに、すぐ真上に新しいヘルペス。新連載『ヘルペス×ヘルペス』。10週連続掲載。

それで、そんなものが唇の真横にできた日には唇にいつもワサビが塗ってあるということも禍いして誰もキスしたくなくなるし、ついつい気になってベロでぺろりと舐めてしまう。頻繁に唇の横をぺろりとやってしまう。すると、気づいたのだけど、この動作は完全にペコちゃんなのだ。フジヤのマスコット・キャラクターそのまま。

23歳、男性、ペコちゃん。

どこか釈然としないけれど、これも運命として捉え、これから不二屋にエントリーシートを書いて提出しようと思う。将来の方針が決まった、ある春の日。
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